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注意

このSSはとあるkey作品をベースにしてあります

故に、ネタバレオンリーになるのでご注意ください

(実際のシナリオとは弱冠変わっています、何たって猫だし)

 

 

 

ん…、お前か…

 

またあったな、そうだな…

 

今夜もまた、あたしの旅先で出会った猫達の話しをしよう

 

 

『ラブスナイパー物語・イン・サマー』

 

 

エクストラ2

あれは確か、茹だるような暑さの中、海沿いの道路を歩いていた時だったかな

途中で、一匹の猫と一緒になった

どうやら、その猫も旅をしているようだ…

口に、小さな風呂敷をくわえていた

中からは、魚の尻尾と人形の一部が覗いていた

旅猫には不思議な力が在った

風呂敷の中の人形を触れずに自在に動かせるようだ

それを使って食べ物を得ながら旅をしているらしい

ある猫を捜して…

変わった奴だとは思ったが、海辺の小さな町の停留所で別れた

あたしはその町のたまり場を探しに

奴は海の方に向かって行った

そいつと再開したのは次の日だった

海辺の堤防の上で寝ていた…

その横に、綺麗な毛並みの雌猫がちょこんと座っていた

これから話すのは、その旅猫とその町に居た猫達の物語だ

 

 

ターゲット1

旅猫がよく行く場所の一つに町の診療所があった

奴いわく、人にその芸(人形な)を見せて飯を得るためらしいが

大体閑古鳥が鳴いていた

だが、その診療所の飼い猫は毎回見ている様だった

これは、その猫の話しだ

その猫は元気のいい奴で常に首に黄色いバンダナを巻いていた

だから町の猫達からはキノと呼ばれていた

本名とは一文字違いだったようだが…

キノに、何でそれを着けているのかを聞いてみた

なんでも大人になるまで着けてると魔法が使えるようになるらしい…

子猫時にそう聞かされて誰かに着けて貰ったそうだが、誰にだったかは覚えてないらしい

旅猫も変わってるが、類は友を呼ぶという奴だろうか…

ある日の夜、あたしが何とは無しに神社を訪れるとそこにキノの姿が在った

こんな時間にどうしたものかと近寄って見ると、様子がおかしい…

目に光りがなく、ただぼーと立っているだけなのだ…

声を掛けようとしてなにかを呟いている事に気付いた

それに気を取られてる間に、いつものキノに戻った…

だが、何故自分がここに居るのかが分からない様だった

それからしばらくたったある日の夜

キノの飼い主が慌てた様子であたしの元に来た

キノがいなくなったらしい

あたしは、旅猫と共に町中を捜し、最後に前にキノを見つけた神社へ向かった

果たして、キノの姿がそこにあった

この前と同じ雰囲気を感じた…

声を掛けようと旅猫が近付いた時

キノが振り向き、旅猫の首を前足で強く締めた

旅猫が離そうとするもビクともしない上に爪を伸ばしているようで首から血がながれ始めていた

あたしが間に入りなんとか離れさせたがキノは意識を失っていた

駆け付けた飼い主と共に診療所に二匹を運び込んだ

幸い処置が早く、痕が残る程度で旅猫の傷はすんだが、キノの方はしばらく眠っていそうだった

その間に、飼い主がキノのバンダナの話しをしてくれた

何でもキノの母猫は体が弱く、キノを生んでしばらくして亡くなったそうだ

そんな事もあり母猫から飼っていた飼い主が母代わりになって世話をしたそうだ

しばらく経った村祭りの夜

一緒に連れて来ていた飼い主に風船をねだったそうだ

その頃、母猫は空にいると話していたらしく、どうやらそれを使って会いに行けると思った様だ

一つ、買ってあげたのだが、人とぶつかった拍子に手を離れて行ってしまった…

新しく買うのに手持ちがなく家に帰り再び戻ると

祭は…終わっていた

時間を考えればわかっていた事だった

その時、突然キノが腕から飛び降りどこかを目指して走り始めた

慌てて後を追うと、神社の境内の裏に入って行った

中に入ると、境内の裏手の戸から光りが漏れていた

その戸の前でキノが座っていた

飼い主が戸を開けると中には一枚の羽根が納められていた

それをキノに渡した時、光りに包まれたそうだ

その時には特に何もなく、羽根を戻して帰ったそうだが、その夜からキノの様子がおかしくなり、ある日の夜…

キノが自分の首を爪で切ってぐったりしているところを発見したそうだ

幸い設備が整っていたから大事には至らなかったが、首には傷痕が遺ってしまったそうだ

それを隠すために首にあのバンダナを巻いてあげたそうだ

もしまたおかしくなっても、バンダナを見て正気に戻ってくれる事を願って…

その話しを聞き終わるとあたしと旅猫は診療所を後にした

翌日、キノは何事もなかったかのように旅猫の芸を見て楽しんでいた

あたしはキノに母猫の事を聞いてみた

まだ、会いたいのか?と

キノは、こう言っていた

前に、このバンダナを大人になるまで外さないでいれば、魔法が使えるようになるって言ったじゃない?

私はその魔法で、空にいるお母さんに会いに行きたいの…

会って謝りたい…

その言葉聞いて、あたしは思ったさ

ここはあたしの出番だと

あたしは言った

何で謝るんだ…もし会って話すなら、言う言葉は違うだろう

自分の子に産まれてごめんなさいと言われて嬉しい親なんていない…

お前が言うべきなのは、ありがとう…だろと

キノは、涙目ながら頷いてくれた…

その夜、キノがいなくなった

あたしと旅猫、飼い主は真っ先に神社を目指して走り、境内の裏…あの日の場所でバンダナを外して血の海に倒れているキノを見つけた

特に外傷はなかったが、目を覚まさない

その時、境内の戸の中から光りが漏れた

開くと、例の羽根が光っていた…

旅猫がそれをくわえるとキノの上に置いて念を込めた

すると辺りを光りが包んだ…

その時あたしは、いやあたし達はその羽根に込められた、あれはそう母の愛を感じた…

気が付くと、キノの上の羽根が消えていた

そしてキノが目を覚ました…

後で聞いたのだが、キノはその時夢の中で母猫に逢ったそうだ

そして、伝えたそうだ

生んでくれて…ありがとう…と

それ以来、キノはバンダナを着けなくなったが相変わらずの元気な猫だった

 

 

ターゲット2

その町のたまり場にいつも二匹でくる猫がいた

落ち着いた猫ともう一匹は正反対のやんちゃな奴だ

やんちゃ猫はよく旅猫にちょっかいをだす奴でイチルって名前でな

落ち着いた方のは、落ち着いてるとは言ってもよく米を小袋にいれて持ってきてはみんなに配る変な奴で名前をイナギと言った

まるで姉妹の様に仲良しなんだが聞いてみると違うと言っていた

これはそんな二匹の話しだ

イナギ達は普段、町の無人駅で二匹遊んでいた

野良だと思っていたんだが、イナギは違うらしい

ある日、町で米を買い込んでしまい重くて大変そうだった女性を助けたんだが、キノのとこの飼い主からその女性がイナギの飼い主だと聞かされた

それをイナギに話した、その時のイナギの顔はどこか悲しげに見えた

ある日、イナギ達と遊んでいてすっかり遅くなってしまった日があった

その頃、夜に烏がたくさん集まっているらしいと言う噂があったからあたしはイナギを家まで送る事にした

なぜか嫌がったんだが、危ないからと言ったら納得してくれた

イチルも一緒に連れて行こうとしたんだが

いつの間にかいなくなっていた

イナギの家に着くとこの前の女性が顔を出した

あたしが事情を話すと優しい顔で感謝をしてくれた

そして、名前を呼んだ、イチル…と

あたしが不思議思い問うより早くイナギと飼い主は家の中に消えて行った

翌日からしばらくイナギが無人駅に来なくなった

一緒に待つ傍ら、あたしはイチルにこの前の事を聞いてみた

しかし、イチルは悲しげな顔をするだけで何も話してはくれなかった…

その後、キノの飼い主からイナギの飼い主の事を聞いた

どうやら心の病気らしい…

原因は話しては貰えなかったが…

あたしはイナギが心配になりイナギの家に向かった

チャイムを押すとこの前の女性−イナギの飼い主が顔を出した

そしてこう問い掛けて来た

どちらさまですか?と…

あたしはこの前もイナギを連れて来た事を話したが

家には猫なんていないと言うばかりでドアを閉められてしまった

……あたしは咄嗟に、無人駅へ走り出した

そこにイナギが居た…

駅の屋根で空を見上げながら…

あたしはその隣に黙って腰掛けた

イナギは話してくれた

イナギにはイチルと言う妹猫が居た…いや居るはずだった…

飼い主の夫がイナギの家に連れて帰ってくる途中で事故に遭い、飼い主の夫と共に他界してしまったらしい…

その事で、飼い主は心を病み、イナギをイチルと呼ぶようになったそうだ

それ以来、イナギは少しでも飼い主の心が楽になるならとイチルであり続けて来たそうだ

だが、今日の朝、飼い主の容態が変わった

朝、いつも通りに顔を見せると言われたそうだ

あら…どこの猫かしら、ダメよ人の家の中に勝手に入っちゃ

……その言葉を聞きイナギは家を飛び出し、ここに来たそうだ…

その日から、イナギは駅に住むようになった

あたしと旅猫もちょくちょく顔を出した

イナギは、いつも通りに振る舞っていたが、どこか…寂しげな感じがした…

そこで、あたしの出番だ

あたしはイナギに言った

町を出ようと思う、よかったらお前も来ないか?と…

イナギは頷いた

イナギを引き連れてあたしはある場所を目指した

途中からイナギはどこに向かっているのかに気付き始めていた…

しばらく歩き、あたし達はそこにたどり着いた…

イナギの家の前に…

そしてあたしは言った

ちゃんと向き合えば、何かが変わるはずだ

だから、逃げるな…と

イナギは意を決して家へと入って行った

その時、庭の方から物音がした

イナギが向かってみると、そこに飼い主がいた…

そして、目が合った時…

飼い主の目から一筋の涙が零れた

そして、確かにこう言った…

イナギ…と

イナギが飼い主の元に駆けていくのを見送りあたしは駅に戻った…

そこには、イチルが一匹でぽつんと座っていた

あたしはイチルに…、ホントの事を話してくれと言った

イチルは…話してくれた…

やはりイチルは、”イチル”だった…

ずっと空からイナギを見ていたらしい

ここで一匹…寂しげな顔をして落ち込んでるイナギを励ましたい一心でいた時だった

空にいた不思議な猫に導かれて気が付くとイナギの前にいたそうだ…

イナギが”イナギ”でいられる場所になる為に…

だが…もう時間らしい…

イナギはもういつでも”イナギ”でいられる…

だから自分は必要は…ないと

あたしはイナギに頼み、イチルをある場所に連れて行った

そう…イナギの…そしてイチルの家にだ

そこで、一緒にご飯を食べた…

その途中…名前を聞かれた

イチルは迷っていたが…イナギに推され名前を言った

イチルは”イチル”って言うの…と

その声が伝わったのか、飼い主は一瞬驚いた顔をするも、すぐに優しく微笑み

いい名前ねと、言ってくれた

その帰り道…あたし達は並んで空を見ながら話していた

今までの思い出を…噛み締める様に…

そのさなか…イチルの姿が消えた…

あたし達は、戸惑うもまだ時間はあるはずだと無人駅へ急いだ

駅の向かい側のホームに…イチルはいた

あたし達が行こうとしたらイチルに来てはダメだと止められた…

イナギは、別れるなんてやっぱりいやだと言ったが、イチルは、もうイナギには自分は必要ない…回りに沢山の猫がいるじゃないかと諭す

いつしか、あたし達は線路を挟み背中合わせに立って話しをしていた…

イチルは言った

この空には羽根を持った猫がいる、そしてずっと悲しんでいる

だから、イナギに逢わせてくれたお礼に、私は幸せな記憶を持ってその猫に逢いに行くと

だから、イナギはずっと笑っていて欲しいと

世界中が笑顔でいっぱいになればきっとその猫も笑ってくれるだろうからと

イナギは頷いた…

そして強い風が吹き、振り向くとイチルの姿は消え、一枚の羽根が空高く舞い上がって行った…

その別れの日からしばらく経ち、イナギから驚く事を聞かされた

ある日飼い主が小さな子猫を連れて来たそうだ

それが瓜二つらしい…

あたしは、イナギによかったじゃないかと伝えた

何?その子猫の名前か?

ここまで話しを聞いてくれたお前ならわかるだろ?

 

 

ターゲットファイナル

さて、その町の話しはこれで最後になるんだが

最初に旅猫と再会した堤防の上にいた猫の話しだ

まずは、その再会の日から話そう

堤防で旅猫達を見付けたあたしは

声を掛けようと近付いたんだ

そしたら、横にいた猫が何かを言ってる事に気が付いた

大丈夫かな…、普通の猫だと思ってくれるよね…

うん、イスズちんファイト…

とか言っていたな

それであたしはそのイスズが旅猫に話し掛けようとして戸惑ってるんだと言うことに気付き

声を掛けるのを待つことにした

その後…数分間の葛藤を経てやっと声を掛けようとしたその時

今まで寝てた旅猫の奴が”生魚!”と言いながら起きた…

傍目で見ていたあたしが驚いた位だ

横にいたそいつもさぞ驚いた事だろう

だが、そいつは驚きながらも逃げ出さず

息を整えて、旅猫にやっとの事で声を掛けていた

そこでやっとあたしも参加し話しをした

その後、旅猫はイスズの家に居候する事になり

二匹で帰って行った

翌日、旅猫から聞いた話しだが

その後、イスズの飼い主に追い出されそうになったり、酒を飲まされたりと色々あったらしい…

そんな訳で、その日旅猫はボロボロだった…

なのであたしがイスズと遊ぶ事にした

だが…昨日と違って余り寄ってこない

というより、なんだか避けられている様だ…

それではラブスナイパーの名折れと

なんとかしようとしたんだが、ありとあらゆる手が通用しなかった…

そうこうしている内に旅猫が復活したの三人で遊ぶことにしたんだが

イスズは、旅猫寄りで遊んでいた

その時程、がっくりした事は今まで馬鹿兄貴の奇行にしかない…

だが、その行動こそが、イスズの抱える闇だとはその時は気付いてやれなかった…

あれはあたしがキノやイナギと仲良くなった後だったか

珍しくイスズが一匹で集会場にやって来た

その頃はイスズもあたしに大分なれて来たのか二人でも話しが出来るくらいにはなり

イスズが、どうやら友達は欲しいが今一歩踏み出せない様だと言うことが何となくわかって来ていた

だからあたしは二匹をイスズに紹介して友達にしようとした

二匹が近付いて話しをしようとした時…

突然イスズがしゃくりをあげて泣き出した…

あたしはイスズの飼い主に連絡した

するとすぐに駆け付けてくれた

これは後で飼い主に聞いたんだが…

イスズには生まれ持った病気がある…

友達が出来そうになると癇癪を起こしてしまうらしい…

その性で今まで友達もいなく、周りからは変な猫に見られてしまっていたそうだ

そして、もうひとつ、重要な事を聞いた

その飼い主…実は本当の飼い主じゃないらしい

本当の飼い主から押し付けられる形で預かったらしい

だから、イスズに近付き過ぎないで一緒にいれる…

そう言っていた

そんな事を聞いた後、イスズを捜してる旅猫とあった

あたしはさっき聞いた話しは伏せて、もう家に帰ったとだけ伝えた

あたしはイスズの気持ちを汲んだ気でいた

だが…事態は急変した

その晩の事だ…

イスズが心配になり家に向かった時だった家の方から泣き声が聞こえて来た

あたしは家に駆け込んだ

そこで、旅猫の前で泣き崩れるイスズを見付けた

一先ず旅猫を部屋から連れだしイスズから離した

そこであたしは旅猫にイスズの話しをした

それを知った旅猫は、イスズの家を出ることにした…

近くに居てはイスズを苦しめるだけだと…

その頃、イスズは足が動かなくなってしまっていた…

そんなイスズを置いて飼い主も旅行に行くと言っていなくなっていた

…あたしはそばに居てやりたかったが…

やはり、イスズを苦しめる訳にはいかないと思い…旅猫と共に町から離れる事にした

夜遅くだった事もあり明るくなるまで停留所で過ごした

そこで、旅猫はあたしに前に言っていた捜してる猫の話しをした

それは旅猫の母猫から、いや…もっと昔から言い伝えられて来た話し

この空には翼を持った猫がいる…

その猫は、ずっと空で一匹で悲しんでいる

その猫をずっと捜して旅をしていたそうだ

あたしは、それを聞いてイチルが言っていた事を思い出していた

旅猫は話しを続けた…

その猫が…イスズなのではないかと思い始めていたようだ

あたしは、旅猫に言った

本当に今…離れて後悔しないのかと一言だけ…

旅猫は黙って横になった…

あたしもその日は眠りに入った…

朝、目覚めると旅猫の姿が無かった…

あたしはイスズの家を訪ねた

出迎えてくれたのは、イスズだった

動ける様になっていたのだ

そして、話してくれた…

今日の朝の事だ、旅猫が訪ねて来たらしい

体の自由が効かなく話す事も出来なかったが、優しく話し掛けているのを感じていたそうだ

そして、旅猫が人形を介して何かを込めた時、あたりが光りに包まれた…

優しい、暖かな光りの中で確かに旅猫と再会した…そして一匹でも頑張る事を約束したらしい

そして目覚めると、辛かった体が楽になっていた…だが、旅猫の姿は消えていた

人形を残して…

あたし達が話してると誰かが帰って来た

旅行に行っていた飼い主だった…

驚くあたし達に、飼い主は旅行という名目でイスズの本当の飼い主の家に行き、頼み込んで来たらしい

イスズを…わたしに下さいと

ずっと、いつか本当の飼い主が迎えに来る…

そう思って、その時に別れが辛く無いように好きにならない様に…近付き過ぎないよう気をつけて来た…

でも…やっぱりダメだった…

一緒に暮らしているうちに、イスズが好きになっていた…

だから…頼みに行った…イスズと本当の家族になるために…

だが…イスズはこれまで通りに暮らそうと提案した…

これまで通りに互いに距離を置いて…

そこであたしの出番だ…

あたしはイスズに言った…

何かを怖がって諦めるのはやめよう…

この人は、その恐怖を乗り越えて来たんだ…

だから、二人で頑張ればいい…

と…

イスズは…頷いて飼い主の胸に飛び込んだ

だが…そこで崩れて倒れた…

確かに、旅猫から何かを受け取り良くなった…

でもそれは少し時間が延びただけだった様だ

イスズはその夜、目を覚まさなかった…

あたしと飼い主はずっと付き添っていた

朝になり…ようやく目を覚ましたイスズは…

あたし達の事を忘れていた…

あたしと飼い主は何とか記憶を取り戻そうと頑張ったが…全く戻る気配がない…

そんな時に…奴はやって来た…

イスズの本当の飼い主が…

飼い主が話しを通したのはそいつの家にだった様だ

だから…話しを聞いて迎えに来たのだ…

記憶を無くしたイスズを見て、君に預けたのは失敗だったようだと言って連れ帰ろうとした

それを飼い主は止めた…

あと三日…三日だけ待って欲しいと

三日後にあんたに付いていくなら諦めるから…あと三日だけ一緒に居させて欲しいと…

あたしからも頼んだ…

そして、あたしと飼い主とイスズの最後の三日間が始まった…

三日間…それはこれまでの年月を取り返すには短い…とても短い時間だった…

その時間を飼い主は懸命に過ごした

…だが、イスズに記憶が戻る事はなく、約束の日がやって来た…

飼い主は最後にイスズが前に誰かと一緒に見たがっていた海にだけ行きたいと話した

本当の飼い主もわかってくれて、4人で夕日の沈む海を見た…

イスズは疲れたのか飼い主の腕の中で寝ていたが…とても綺麗な景色だったのを覚えている…

そして別れの時が来た…

飼い主はイスズを本当の飼い主に渡した…

そして、イスズのお気に入りの玩具や飲み物も渡し、去り行く二人を見届けていた…

あたしも…その光景を堤防から見ていた…

そこで異変が起きた…

イスズが本当の飼い主の腕の中で暴れ始め堪らず、イスズを落としてしまった

さっき渡された物であやそうとしても拒絶される…

イスズは何かを探すように辺りを見回す

そして、一点を見つめ覚束ない足取りで歩き始めた

あたしは、その時イスズが聞こえた…

ママ…そうなんども繰り返しながら、そうあの飼い主の元に向かっていた

それに気付いた飼い主は駆け寄りイスズを抱きしめた…

その時、初めて二人は本当の家族になれたんだ…

それを見て、本当の飼い主はこんど信頼出来る獣医を連れて来るから見せてやって欲しいと

最後の願いを飼い主に託し帰って行った…

ん?いい話しだって?

ん…ここで終わってればよかったんだがな…

…続きを話そう……

その夜は三人で過ごした…だが、イスズの病は進行していて一晩中、痛みに襲われ続けていた

あたし達は懸命に看病をしたよ…

翌朝…あたし達を迎えたのはいつもと変わらぬ笑顔のイスズだった

しかも、あれだけ戻らなかった記憶が戻っていた

さっきまで苛まれていた痛みも失くなったと言うの聞き飼い主と共に喜んだ

イスズはもう一度海が見たいと言った

あたし達はまだ無理をしないでいい様にイスズをキャリアーカーに乗せて海へ向かった

途中、イスズの好きなジュースの自販機があったので買ってやった

そこでイスズが言った、少し先に行ってて

あたし達は不思議に思ったが、動けないで寝ていたのだからリハビリは必要だと考え

頷いて少し先に立った

そして…イスズが地面に降り立ちゆっくりとあたし達を目指して歩き始めた…

その途中であたし達は気付いた…イスズの様子がおかしい事に…

笑顔の中に明らかに苦痛の色が見えるのだ

そう…イスズの病は治ってなんていなかったんだ…

イスズはあたし達に心配かけないように、そう振る舞っていただけだったんだ…

それに気付いた飼い主が駆け寄ろうとしたが…イスズに止められた

お母さんは…ゴールだから…今まで頑張って来た私たちの…ゴールだからと…

イスズは最後の力を振り絞り…飼い主の胸の中へと…ゴール…した…

イスズは…やはり空にいるという猫の生まれ変わりだった…

たが…その猫の受け継いで来た記憶はあまりにも膨大だった…

だから…生まれ変わってもその重さに耐え切れず肉体が死んでしまう…

癒される暇などなく…一人寂しく死んでしまう…

それを繰り返して来たらしい…

だが…イスズは息を引き取る前に言っていた…

私のゴールは…幸せと一緒だったからと…

旅猫は…確かに空にいた猫を救ったんだ…

飼い主は泣き止まなかった…

あたしの頬にも一筋の雫が流れていた…

あたしは飼い主が立ち直るのを待って町を出た

彼女はその後、ペットショップで働き始めた

沢山の新しい家族の誕生を手伝いたいと彼女は言っていた

町を出る際に、不意に空を見上げてみた…

透き通る青空に一羽の鳥が羽ばたいて行った…

 

 

さて…長話になってしまったな

今夜はここまでにしよう…

 

あたしの名は棗鈴…猫呼んでラブスナイパー

おとした猫は数知れず…

次の町の話しは…また今度の夜にな…

 

 

END?

あとがき

というわけで、ラブスナイパー物語クロスオーバー第二弾「空」編でした。

んー、無理矢理すぎたかも・・・

今まで名前を伏せて書いてきましたが・・・美凪編はその名前が重要ではないか!

と書いてる途中で気付き(ほんとはやんちゃとライスにするつもりでした・・・)急遽、一文字替えのカタカナで統一しました。

しかし、こうしてみると・・Ariはとても詰め込まれている作品なのが良く分かりました・・・

・・・心残りは・・・神奈を使えなかったことかな・・・

しかし、ただ今製作中の第8回戦では・・・

というわけで次回は第8回戦に成る予定でいるつもりです。

 

 

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